ゲーム機のコントローラーのボタン配置と決定ボタンの変遷(その2)

前回(その1)ではスーパーファミコンまで紹介しました。

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今回は6ボタンとアナログ入力に触れつつプレイステーションなどを取り上げます。
まずは据置ゲーム機のボタン構成に影響を与えたゲームについて。

ちなみに記事タイトルに入れようとしたものの長くなって入り切らなかったため記事タイトルから省いていますが、新コントローラーがどういう変化をしたのか・どういう新機能が付いたのかも結構説明します。

 

 

 

ストリートファイターⅡの登場と家庭用ゲーム機への移植(92年~)

91年にアーケードで稼働を開始し、一大ブームを巻き起こした格闘ゲームストリートファイターⅡ(略してスト2)。家庭用ゲーム機へも移植されるのですが、ここで関係してくるのがボタン数。攻撃用のボタンがパンチとキックそれぞれに弱・中・強の3段階があり、合計6ボタンになります。

スーファミはABXYに加えてLRも使えば6ボタンになるので標準のコントローラーでもプレイできますが*1PCエンジンメガドライブではボタンが足りない。ということでスト2移植をきっかけに6ボタンのパッド(コントローラー)が発売されます。

 

ファイティングパッド6B(93年1月)

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メガドライブ版スト2未発表の頃に発表された6ボタンパッド。メガドライブの小型廉価版であるメガドライブ2(93年4月発売)にも標準で同梱されています。その後メガドライブ版であるストリートファイターダッシュプラス(93年6月→9月に延期)も発売されています。

スト2移植への前準備でもありますがそれと同時に、大きい上押しづらかったメガドライブの標準パッドの操作性改善目的もあったのでしょう、かなり操作性が向上しています。

 サイズは小型化し、ボタンは固さが改善し、何より方向ボタンの操作のしやすさが格段に違います。任天堂系の十字ボタンとも違い、押した時のストロークが深いため押している方向がわかりやすく操作ミスしづらいです。固さも無いのでグリグリ動かせます。

ABCボタンの上にXYZボタンが追加されただけなので、6ボタン非対応ゲームではそのままABCボタンを使用します、なので決定・キャンセルボタンもそのまま。ちなみにSFCで言うRボタンの位置にMODEボタンがありますが、これは従来の3ボタンパッドとして振る舞い一部ゲームで誤動作するのを防ぐためのボタンです。

 

アーケードパッド6(94年6月)

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Photo by  JohnnyMrNinja / CC BY 3.0 / trimmed from original

 

PCエンジンDuo-RX*2にも同梱されているパッド。やたら並んでるスイッチは連射切り替えスイッチと6ボタンモード2ボタンモード切り替えスイッチ。

今回紹介するのがゲーム機本体と同じメーカー(PCエンジンの場合はNECホームエレクトロニクス)である純正品コントローラーを基準としているため発売時期がPCエンジンのスト2(ストリートファイターダッシュ。93年6月発売)より1年近く遅いですが、PCエンジン用6ボタンパッドはスト2発売と同時期にNECアベニュー*3のアベニューパッド6等が出ています。

PCエンジンのパッドのボタンは右からⅠ・Ⅱと並んでいますが、独特なのが6ボタンの場合の配列。3ボタンのアベニューパッド3でⅠ・Ⅱの先にⅢが追加されたまでは理解できるのですが、6ボタンになると、

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右からⅠ・Ⅱ・Ⅲと来た後反転して左からⅣ・Ⅴ・Ⅵと並んでいます。なんで折り返した?

Ⅰ・Ⅱボタンは既存のゲームでそのまま使えるので、決定ボタンはⅠ、キャンセルはⅡのままです。

 

セガサターンコントロールパッド(94年11月)

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メガドライブのファイティングパッド6Bをベースに、より握りやすい形になり、SFC同様の位置にLボタン・Rボタンが付きました。その操作性の良さから最高のデジタル入力ゲームパッドと評価する人もいる根強い人気があるパッドです。

標準のパッドのボタン配置が6ボタン格闘ゲーム向きで方向ボタンもコマンド入力しやすい・拡張RAMカートリッジでメモリを増量可能なおかげか、カプコンの様々なアーケード6ボタン格闘ゲームが移植されています。

メガドライブと同様決定ボタンはCとA・キャンセルボタンはBというソフトが多いです。

 

プレイステーションのコントローラ(94年12月)

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はいウソですPS1のコントローラーではありません。でも本当にプレイステーションのコントローラーではあります。

元々プレイステーションという名前はソニーが開発していたSFC用CD-ROMアダプタのコードネームであり、これはそのCD-ROMアダプタとSFC本体一体型ゲーム機プレイステーションのプロトタイプに付いているコントローラーです。後に任天堂ソニーと決別しSFC用CD-ROMアダプタは発売されず、ソニーは独自にゲーム機を開発します。

グレーのSFCのコントローラーの白バージョンと言った色で、SFCのアイコンの横にPlayStationのロゴが並ぶというなかなか感慨深くなる見た目です。



小ネタはほどほどにして、本当のPS1のコントローラーはこちら。

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左右にグリップが付いていて、握って支えることができるようになっています(そしてこれが後々の様々なコントローラーのスタンダードに)。ボタン配置はSFCのコントローラー(左に十字ボタン、右にひし形状に4つボタン、人差し指にLR、SELECTとSTART)を踏襲していて、ABXYボタンの名前がPSでは◯✕△□に、Lボタンの場所には手前のL1ボタンと奥のL2ボタンの2つのボタンがあります(Rボタンも同様)。

SFCのコントローラーは左右に円を意識したデザインが含まれますが、よく見るとこっちもそうですね。方向キーや4ボタンは円の上に載っていて、それらを長方形で繋ぐ。

一見方向キーが上下左右4つのボタンに分離しているように見えますが、実際は真ん中もコントローラーの中で繋がっていて1つのパーツでできています。十字ボタンや方向キーの押し方には人によって「真ん中に親指の腹を置いて押す派」「真ん中を親指の先で押す派」「ボタンの先の方を親指の先で押す派」など細かい違いがありますが、これは真ん中が欠けてるため「真ん中を親指の先で押す派」に厳しい形状の方向キー。

 

この時期は他機種では6ボタン格ゲーにも対応するために右手側に6ボタン配置されてることが結構多いのですが、PS1のコントローラーはSFCに近いボタン配置です。

と、ここで開発途中のコントローラーが展示されていた「『PlayStationと科学』展」の記事を見てみましょう。

game.watch.impress.co.jp

右手側に6ボタン配置する案も検討されていた事がわかります。特にこれなんかかなり興味深い。

https://game.watch.impress.co.jp/docs/20040429/scej09.htm

なんだこれ  ボタン配置が製品版とは◯と✕が逆(決定ボタンを下に配置する案もあった?)、初代XBOXコントローラーみたいに4ボタンとは別に追加される2ボタン(+とー)とその結果左にズレるSTART・SELECT。なかなかのインパクト。SFCのコントローラーが逆さになったみたいというか、なんか左利き用に逆さに持って操作、とかできそうな形ですよね。*4 初期の開発機に同梱されていたコントローラーは、ロゴやボタン名が書いてないながらこれと同型のようです。

あと、一見しただけでは意図がわからないこれ。

https://game.watch.impress.co.jp/docs/20040429/scej11.htm

解説によると「格闘ゲームなどの時イメージしやすいように人型をかたどったもの」らしいです。上段がパンチボタンで下段がキックボタンでしょうか。4ボタンで左右に分かれてるから鉄拳に最適そう。

 

◯✕△□の由来ですが、プレイステーションをデザインした後藤禎祐氏のインタビューではこのような発言があります。

www.ohtabooks.com

○と×はYESとNOで、色は赤と青。△は頭や視点を表すもので、色は信号機にならって緑。□は紙で、メニュー・文書を示すもの。色は全体のバランスからピンクにしました。

◯がYES、✕がNO、△が上に配置されているという所はそういう意図があってそうなっているようです。◯が右、✕が下に配置されているのは、日本でのSFCデファクトスタンダードであるA決定Bキャンセルを踏襲した結果でしょうね。ボタンに肯定・否定の意味のあるマークを割り当てることで、初めての人もなんの役割のボタンかわかりやすい&覚えやすい効果が。

◯が赤、✕が青なのはインタビューでも特に理由が書いてないですね、当時も◯✕クイズなどで◯が赤、✕が青が使われていたイメージがありますが。

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今でも「マルバツ」で画像検索すると大抵赤と青です。その内7割ほどが◯赤・✕青。色的には赤というと警告色や否定的イメージですけど、日本だと「赤丸」でポジティブなイメージなんでしょうか。

決定ボタンは前述のとおりSFCのボタン位置を踏襲して、右の◯ボタンが決定、下の✕ボタンがキャンセルです。

 

 

 

と、他の機種ならここでPS1の初期コントローラーの話はここで終了ですが、今回は重要なのはむしろここから。海外の場合の話です。

ということで今回も決定ボタン調査。まずSCE(現SIE)、特にSCEA(アメリカ)販売のソフトについて。

タイトル 発売時期 決定 キャンセル
Ridge Racer 95/09 ◯✕ △□
Jumping Flash! 2 96/08
Jet Moto 96/10  
Cool Boarders 96/12
Final Fantasy Ⅶ 97/07
Jet Moto 2 97/10  
Alundra 97/12  
The Granstream Saga 98/06
Gran Turismo 2 99/12 ◯✕ △□
Alundra 2: A New Legend Begins 00/02

 

どれも✕決定な中燦然と輝く◯決定のFF7。日本で決定が◯ボタンのみのソフトは海外版は軒並み✕決定に変更されてるのに、何故◯決定のままなんだFF7

FF7はともかく、ここまで✕決定に工数も割いて変更されてるとなると、SCE(この場合SCEA?)で北米での決定ボタンは✕という方針を決めているのでしょう。一方◯キャンセルは最初から徹底されていたわけでもない感じですかね?キャンセル自体無いゲームが多かっただけ?もし海外で✕決定にする方針が無く✕決定が浸透してない状態でFF7出てヒットしたら、FF7の◯決定✕キャンセルが広まった可能性もあったのだろうか。

日本でははっきりと「◯が決定・✕がキャンセル」という意図を持ってコントローラーがデザインされたのに、海外ではすぐ覆されているということになります。

当時北米でのローンチ時に✕決定に関わった方の話が出ていました(otsd_zepさん情報ありがとうございます)。

otocoto.jp

当時どう考えても“〇がイエス”で“✕がノー”と捉えて疑問にも思わなかったところ、米国人のスタッフ達は“✕イエス”、つまり肯定的な意味だと普通に言うのです。

たびたび言われている「✕はチェックマークとしても使われるので決定ボタン役になった」という感じでしょうか。

デザインした後藤氏のインタビューでもごく普通のことのように語られていた「◯と✕がYESとNOで赤と青」ですが、◯と✕でYESとNOなのは日本と韓国くらいらしいですね。では海外ではどうなのか。海外サイトで「YES NO」で画像検索すると多いのはこんな感じです。

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色もマークも違う。いや、✕がNOなのは同じですね。色は警告色の赤。そしてYESは緑のチェックマーク。このYESとNOの色については後々別機種でも触れる予定。

✕はチェック欄ではチェックマークとしても使われるケースがありますが、それ以外では基本的に否定的な意味のマークとして使われているようです。同じソニーでもSIEではなくSDNA(ソニーデジタルネットワークアプリケーションズ)のサイトですがこういう情報があります(今はURL変更の余波を受けたのか見れなくなっています)。

○×△(まる ばつ さんかく)英語でもそのまま使っていませんか? | SDNA ローカライズチームブログ

この記事では、

  • ◯はオフ(電源のオフマーク)、emptyなど否定的な状況を表す
  • ✕は“do not“や“prohibited“など強い否定、インターフェースでは“close“や“cancel“

という事が書いてあったようです(PSの決定ボタンの国によっての違いにも触れています)。

例えば、

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このエラーウィンドウは左の✕がdo not、右上の✕がcloseを表していますね。

✕も日本同様否定的な意味合いが強いようですが、◯✕△□の中に肯定的な意味合い"も"持つマークが✕しかなかった結果、決定ボタンに使うなら✕、ということになったんでしょうか。

米国では“✕が決定”ということに決まりました。当時、この点に関してはほとんどリサーチが行われなかった記憶があります。

ともありますが、向こうの✕マークで決定への印象は実際どんな感じなんですかね。

 

前述のリストはSCE販売ソフトに限ったリストですが、続いてはそれ以外のリスト。

タイトル 発売時期 決定 キャンセル
Lemmings 3D 95/11
Alien Trilogy 96/01  
Suikoden 96/12
Castlevania: Symphony of the Night 97/10  
Colony Wars 97/10
Breath of Fire Ⅲ 98/04
Diablo 98/05
Grand Theft Auto 98/06
Tales of Destiny 98/09
Duke Nukem: Time to Kill 98/09
FIFA 99 98/11  
R4: Ridge Racer Type 4 99/05
Dino Crisis 99/09
Quake 99/09
Final Fantasy 99/09
Valkyrie Profile 00/08
Final Fantasy 00/11
Breath of Fire Ⅳ 00/11
Dragon warrior Ⅶ 01/10

 

FF7もそうでしたが◯決定は「日本版での決定ボタンを変えずに海外版出してるな?」という所でしょうか、それ以外は綺麗に全て✕決定です。販売がSCEAからSquare Electronic Arts*5に変わったFFは8から✕決定になりました。では何故◯決定のままだったんだFF7

気になるのは海外開発のゲームに多い、謎の勢力「✕決定△キャンセル」です…何の影響だこれは。初の上ボタンキャンセル勢力登場です、カプコンまで✕決定△キャンセルにしてます。◯キャンセルが広まる前に一部で△キャンセルが広まったのでしょうか。◯✕決定△□キャンセルを変な取り込み方したとも解釈できるかもしれません。決定は✕押してキャンセルは△って押しづらくない?

Lemmings 3Dはマウス対応で、マウスの左ボタン(決定ボタン)が✕、右ボタンが◯に対応していました。確かに✕と◯の並びも左に✕ボタン、右に◯ボタン。

 

PC-FXのFX-PAD(94年12月)

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PCエンジンの次世代機に当たるPC-FXPCエンジンのアーケードパッド6をそのまま持ってきた感じのFX-PADですが、6ボタン分あってやたら多かった連射切り替えスイッチは消滅しモード切替スイッチが2つになりスッキリしました。このスイッチはゲーム側から状態を確認できて、その状態に合わせてゲームの動作を変えるという用途に使える(例えば消滅した連射切り替えスイッチとして使ったり)、なかなか珍しい汎用のスイッチとなっています。

6ボタンありますがカプコンの6ボタン格闘ゲームは出ていません、というか画面に2人並ぶタイプの普通の対戦格闘ゲーム自体1本も出ていません。

ボタン構成はアーケードパッド6と同じ。決定ボタンもPCエンジン同様ですね、Ⅰで決定Ⅱでキャンセルのまま。

 

バーチャルボーイのコントローラ(95年7月)

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ゴーグルを覗き込むことで立体視が可能というバーチャルボーイ。電池駆動だけど携帯するには大きく、使う時は据え置く必要があり、でも据置機みたいに別途テレビは必要ない、携帯機なのか据置機なのか分類し難いゲーム機。

四角い電池ボックス(バーチャルボーイゴーグル側ではなくコントローラー側に電池を入れる)のそれぞれ左右から十字キー&2ボタンのパッドがくっついてそこから更にグリップが伸びる、みたいな変な独特な形状。コントローラーの右にも十字ボタンがあってボタン類まで含めて左右対称なのも独特ですが、ボタン構成は右にも十字ボタンがある他は左の十字ボタン・SELECT・START・B・A・L・Rと意外と普通です。ボタンの名称は2つの十字ボタンがそれぞれL十字ボタンとR十字ボタン、LRはLトリガーボタンとRトリガーボタンとなっています。LRはSFCのLRよりも64のZに近いかも。

左右の十字ボタンはDUALSHOCKの左右アナログスティック同時使用のような使い方をします。L十字で左手・R十字で右手を動かすとか、L十字で向き回転・R十字でスライド平行移動とか、L十字でキャラ移動・R十字で押した方向へ投げ分けとか。もちろんR十字ボタンを使わないゲームも多いです、テトリスで十字ボタンは2個必要ない。

形状は独特ですが決定ボタンはゲームボーイ同様Aで決定Bでキャンセル。

 

NINTENDO64のコントローラ(96年6月)

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アナログスティック採用については後で詳しく触れます。

こちらもなんだか独特な形ですが、左右にグリップ(レフトグリップとライトグリップ)があるコントローラーからセンターグリップが伸びた、と解釈できる形状ではないでしょうか。

グリップが3つと言ってももちろん第3の手を持つ者専用コントローラーとかではなく、この3つのグリップの内2つを握ってプレイすることで、アナログスティックと十字ボタンと6ボタンを使い分けるという仕組みのコントローラーです。それぞれ、

  • レフトグリップ:十字キー(あっ名前が十字ボタンじゃなくなってる)とLトリガーボタンを操作
  • センターグリップ:3Dスティック*6とZトリガーボタン(裏側にあり、銃のトリガーのように人差し指で押す)を操作
  • ライトグリップ:ABボタンとCボタンユニット(黄色の4ボタン)とRトリガーボタンを操作

となっています。Zボタンという名前は多分ボタンが奥方向にあるためかと(横方向のX軸と縦方向のY軸と前後方向のZ軸)。

2箇所握るグリップの組み合わせの通称があり、

  • ライトポジション:センターグリップとライトグリップを握る。多くのソフトで使用するスタンダードな持ち方
  • ファミコンポジション:レフトグリップとライトグリップを握る。十字キーとボタンで操作する昔ながらの持ち方。この持ち方のソフトはそれほど多くない
  • レフトポジション:レフトグリップとセンターグリップを握る。数本のソフトでしか使われていない

の3種類です。大抵はライトポジで少数がファミコンポジという感じでした。中にはトレジャーのように一度もライトポジを使わなかったメーカーもありますが。

握る場所が1箇所増えている分、コントローラーのサイズは大きいです。

Cボタンユニットは、バーチャルボーイのR十字ボタンのように2軸デジタル入力ボタン(いわゆる十字ボタン)として使うこともできますし、ABボタンとは別の4つ並んだボタンとして使うこともできます。これで、スーパーマリオ64ではABボタンをプレイヤーキャラのアクションに使うのとは別にCボタンユニットをカメラを操作するボタンとして使用(近年のゲームの右スティックでカメラを操作するのと同様)することで「三人称視点の3Dアクションをパッドで操作する場合視点をどうするか」問題に1つの解答を出しつつ、ABCボタンを6ボタンとして活用することで6ボタン格闘ゲームに対応することもできます。スマートな解決方法ですね~。

ちなみにカプコンの6ボタン格闘ゲームは1本も出ませんでした。あれ? *7

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コントローラーの裏側には拡張コネクタがあり、そこに差し込む周辺機器もいくつか出ています。データをセーブできるコントローラパック、振動機能を追加する振動パック、GBのカセットを差し込んでデータを読み込む64GBパックなどです。

振動パックは標準コントローラー初の振動機能ですが、この時は内蔵ではなく外付けでした。単4電池を2本入れる必要があり結構重くなります。


ABボタンの位置が、プロトタイプの時のSFCと同じくAボタンが下、Bボタンが左になりました。これで、「下のボタンで決定」と「Aボタンで決定」を両立できるようになりました。やったね! 実際のゲームでも決定ボタンはA決定Bキャンセルです。これで今度こそ任天堂サードパーティも下ボタン決定で統一だ…。そうこうしてる間に他所で右ボタン決定を受け継ぐ新勢力が出ましたが。

SFCの4つ並んだボタンはどれがメインなのかよくわからないところがありましたが、Cボタンの1つ1つはABボタンより小さく色も1色なので、ABがメイングループでCがサブなのがわかりやすくなったのではないでしょうか。

 

標準コントローラーへのアナログスティックの採用

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家庭用ゲーム機の歴史は、パドルコントローラーというツマミを回して1軸のアナログ入力が可能なコントローラーから始まりましたが(2つ使えば2軸)、その後1つでX軸とY軸の2軸入力可能なレバーやジョイスティックに置き換わり、ファミコンがヒットしてからは十字ボタンの影響で平たい方向キーが採用されていきました。

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64では本体に同梱の標準のコントローラーに2軸アナログ入力のスティックが採用されました。ファミコン以降も別売りならアナログ入力可能なコントローラーもいろいろ存在していますが、標準のコントローラーに採用されるのはAtari 5200やVectrex(光速船)のアナログジョイスティック(人差し指と親指でつまむタイプ)以来ではないでしょうか。

デジタル2軸の8方向と違い方向が360度無制限で、0か1かのデジタル入力と違いスティックを少しだけ倒す・ゆっくり倒すなどの操作が可能です。角度が自由なポリゴンの3D空間だと8方向限定では直接行けない角度が頻繁にできてしまうという問題を、入力方法の変更で解消しています。

64の3Dスティックという命名は、3Dポリゴン時代に合わせた、3D空間を思いのままに操作するのに最適なスティックということでしょうか。なお入力はX軸Y軸の2軸アナログで、スティック押し込みとかはありません。それ2Dじゃね?

3Dスティックの周囲の外枠は円ではなく八角形になっています。これにより上などに正確に入力しやすく、画面に対して真っ直ぐ前に移動するなどの操作がしやすくなっています。センターグリップを握るとスティックに対して親指が真っ直ぐ当たるのも、真っ直ぐ前移動がしやすい要因。8方向外枠の欠点は、スティックをグルグル回す操作をした場合に45度ごとにガクガクする所。

 

セガサターンセガマルチコントローラー(96年7月)

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Photo by  Evan-Amos / CC BY-SA 3.0 / trimming and color adjustment from original

 

マルチコントローラー、略してマルコン。

元々セガはアーケードではハンドルや操縦桿など専用筐体ものでアナログ入力をよく使っていて、サターン用にもレーシングコントローラーや操縦桿のようなアナログミッションスティックなどの大きめの周辺機器を発売しアーケード移植作などで使用できました(マルコン発売後のソフトはそれらに加えてマルコンのアナログ入力にも対応)。

今回手で持つタイプのコントローラーにアナログ入力を付け、しかも上部に64コン同様拡張ソケットもあり(でもソケットに挿す拡張ユニットは出ませんでした)、かなり64の影響が垣間見えます。サターンのマルコンは、64が延期で発売が後ろにずれ込んだ結果64発売の翌月という早さで発売されています。64のコントローラー初公開の時点でセガもすぐに手持ちアナログコンを検討したのだろうか。

カラーリングは、これより4ヶ月ほど前に出た廉価版の白いサターンに付いているコントローラーと同じです(LRトリガー・STARTボタンやABCボタンが別々に色分けされている)。

LRトリガーがストロークのあるアナログになっていて、アクセルの入力加減を調節したりという用途で使用されています。

見た感じは64コンと違いグリップを握り直す必要なく方向ボタンとアナログキー(公式の名称はスティックではない)が両方同時に使えそうな位置にありますが、実際は排他利用で、下にあるモードスイッチでどちらか一方を選んで使用します。

同時発売ソフトは「NiGHTS into dreams...」 マルコン同梱版もあります。スーパーマリオ64も64のコントローラーを存分に活かしたソフトでしたが、ナイツもマルコンのアナログキーを存分に活かしたソフトです。というか最適すぎてマルコン自体がナイツのためのコントローラーと言われたりします。アナログキーをスムーズにくるくる回転させる操作が方向ボタンではできない操作感で気持ち良いです(64コンだったら八角形の外枠でガクガクする)。

ファイティングパッド6BやDUALSHOCKのように本体に同梱される標準コントローラー化されることはなく、別売り周辺機器のままでした。レーシングコントローラーやアナログミッションスティックに対応するアーケード移植作はマルコンも対応しましたがそれ以外のソフトのマルコン対応はあまり広がっていません(ソニックジャムやバーニングレンジャーなど)。3Dに強いのはPS1でありサターンは2Dや格ゲーに需要が強いというのもマルコンの需要に影響あるのかも。

 

プレイステーションのアナログコントローラ(97年4月)
DUAL SHOCK(97年11月)

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画像はDUALSHOCKの方。初代DUALSHOCKってDUALとSHOCKの間にスペースあるのが当時の正式名称?DUALSHOCK 2にはスペースなし。

初期コントローラーにアナログスティックを2本付けて、振動機能を内蔵しました。アナログも振動も64の影響だとは思いますが、振動機能の内蔵化が便利。

PS1のアナログコントローラーは出てから半年ちょっとでDUALSHOCKとしてマイナーチェンジし、本体に同梱されるようになりました。どちらも大まかには同じですが、DUALSHOCKは振動が2種類になっているなど細かい違いがあります。


DUALSHOCKの振動は。細かい振動と回転速度遅めの2種類です。前者が「ヴィーーーン」なら後者は「ドゥルンドゥルン」みたいな感じ。初めて体験した時は楽しくてわざといろいろ振動させてましたねー。

元々のコントローラーを見慣れてるとちょっとスティックの後付け感がある一方、左右対称のシルエットは維持しています。右スティックだけでなく左スティックも手から離れた位置にあり親指を伸ばして操作するため、左スティック使用中は手の小さい人ほど親指が疲れたりしっかりグリップを握れなくなったりL1L2が押しづらくなったりします。また、64コンやマルコンと違い親指がスティックに対して斜めに当たることになるので、スティックを真っ直ぐ前に倒しているつもりでもなんか曲がってる、みたいになりがち。

こちらは64コンと違い握り直さなくてもスティックと方向キーを併用できます。PS1の頃は別用途で併用することはあまりないですが、その後スティックをメインに使いつつ方向キーを4ボタンとして使うゲームも増えていくので結構重要。

アナログスティックは押し込むこともできます、左スティック押し込み入力はL3ボタン、右スティック押し込み入力はR3ボタンという名称。ボタンと言ってもボタンの形が見えるわけではありませんが。

左にアナログスティックを付けるのはわかるけど右にもスティックって何に使うんだろう、と初公開当時は思ったものです。実際、右スティックは変わった操作方法のゲームで使われる程度で、オーソドックスな操作のゲームでは左スティックと違い存在自体無視されがちでした。用途が謎。

初の「アナログコントローラ専用ソフト」であり右スティックを攻撃などに使う(スティックを倒した方向に攻撃。VBマリオクラッシュ的な使い方?)サルゲッチュ(99年6月)ではパッケージ裏に「右スティックに朗報!?」という言葉が。使われなさがネタにされてる所に当時の右スティックの扱いが垣間見える。

64のマリオでは、左はスティック(移動)・右はAB(アクション)とCボタンユニット(カメラ操作)という「左で2軸入力+右でボタンまたは2軸入力」な操作体系で右手はアクションとカメラ操作を使い分けていましたが、PSでもそれと同様に右スティックを「右でボタンと使い分ける2軸入力」としてカメラ操作に割り振るのが一般的になるのはもう少し先になります。


PS1のライフサイクルの1/3くらい経ったところで本体に同梱されるコントローラーがDUALSHOCKに切り替わったので、アナログ対応ソフトは多いです。PS1を持っていても初期のアナログなしコントローラーを知らないという人も珍しくないのではないでしょうか。

 

 

 

あぁ、前回のその1の時の文字数を超えてしまった、その2でXboxまでやるつもりでしたが今回はここで止めます。話が全然進んでなーい。コントローラーの説明がどうしても増えてしまうなぁ。全3回のつもりだったけどこれは全4回になるな…。

 

 

次(その3)はこちら。

u-mid.hateblo.jp

*1:標準のコントローラーがABCとLRの5ボタンにも関わらずスーパーストリートファイターⅡXが出た3DOでは、SFCのSTARTボタンに相当するPボタンをも攻撃ボタンに利用するという荒業を使っています。

*2:SUPER CD-ROM²との一体型本体であるPCエンジンDuoの2番目の廉価版(Duo→Duo-R→Duo-RX)

*3:NECグループのレコード会社で、PCエンジンPC-FX向けのソフトや周辺機器の製造・販売も行う。

*4:メガドライブコントロールパッドはそういう設計になってて対応ソフトもあります。Atari Lynxも逆さ持ち対応。

*5:北米のEAと日本のスクウェア合弁会社。当時は日本でEAスクウェアがEAのソフトを、北米ではSquare EAがスクウェアのソフトを販売していた。

*6:ふりがなは"サンディスティック"です、"スリーディー"でも"さんディー"でもなく"サンディ"です。

*7:スト2同様の6ボタン配置の、移植ではなくオリジナルの対戦格闘ゲームは他社から出た。